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吉岡家一同おとうさんのブログ
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orare,studere,gaudere,neminem laedere,non temere credere,de mundo non curare.
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アーチャー The Prodigal Daughter を読む

2009/07/05 17:09
The Prodigal Daughter

アーチャーの The Prodigal Daughter を読みました。Pan Books のペーパーバックを長崎市立図書館で借りました。上の画像は著者であるアーチャーのホームページから引用しています。日本の邦訳は『ロスノフスキー家の娘』として新潮文庫から出版されています。もちろん、原題は『聖書』の「放蕩息子の帰還」を下敷きにしていることは言うまでもありません。タイトルを上げただけでも分かるように、『ケインとアベル』の続編でアベル・ロスノフスキーの娘フロレンティナを主人公にしています。フロレンティナが幼稚園に上がるあたりから、ケイン家の長男であるリチャードと結婚して、さらに、政界に入って米国大統領に就任するまでの60年近くを扱う長編です。でも、私は英語版のすべてを読んだわけではなく、日本語版の印象的なところを拾い読みしただけだったりします。なお、邦訳が文庫で出版されてから数えても25年以上たっていますので、ネタバレについてはご容赦ください。
大雑把に、いくつかの部分に物語は分かれ、フロレンティナが幼稚園から大学に入るまで、大学時代からリチャードと結婚してビジネスで活躍するころ、政界に入り下院議員から上院議員そして民主党の大統領予備選から副大統領になり、最後は現職大統領の死により大統領に就任する宣誓をし、リチャードの死後フロレンティナを支え続けて来た幼馴染みのエドワード・ウィンチェスターとの結婚を宣言するところで終わります。このうち、私はフロレンティナが大学に入るまでの物語を特に気に入っています。この部分では、ミス・トレッドゴールドというとっても魅力的なフロレンティナの家庭教師 governess が主人公とすら言えます。
ミス・トレッドゴールドは英国人で聖職者を父に持ち、その父から "I was born to be a teacher and the Lord's plan took us all in its compass so perhaps I might teach someone who does have a destiny." と言われたことがあると雇い主のアベルに打ち明けると、アベルは最後の部分を受けて "Let us hope so." と応じます。特に、私が気に入っているのはこの場面で、フロレンティナが幼稚園のころ、大事にしていて FDR と名付けたテディベアのぬいぐるみ、もちろん、当時のローズベルト米国大統領にちなんで名付けられたこのぬいぐるみを、エドワード・ウィンチェスターが手をもぎ取って青いインクをかけた事件の夜、ミス・トレッドゴールドとアベルの間で交わされる会話です。繰返しになりますが、フロレンティナがアベルの仇敵であるウィリアム・ケインの息子であるリチャードと結婚し、リチャードの死後に結婚を宣言するのが、このエドワード・ウィンチェスターです。少し脱線すると、フロレンティナとエドワードの米国大統領夫妻は、同じアーチャーの続編『大統領に知らせますか?』 Shall We Tell the President? にもチラリと登場します。

私自身は何かになるために生れついたとも思いませんし、運命の誰かや何かに出会うとも考えていませんが、逆に、仏教徒的にすべては縁によって決定されるとまでは達観していません。でも、人々は神や仏が予定された範囲にあるという記述は、孫悟空がきんと雲に乗って遠くまで飛んで来たつもりでも、それでも、お釈迦さまの掌の範囲内であった、とされる『西遊記』の記述と通ずるところがあって、非常に興味深いものがあります。
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ウィンブルドン大会女子シングルス決勝を見る

2009/07/05 11:44
Winbledon Championships Logo

昨夜、NHKの中継でウィンブルドン女子シングルスのファイナルを見ました。結果はみなさんご存じの通り、妹のセリーナが姉のビーナスを7-6、6-2のセットカウント2-0で下して6年ぶり3度目のチャンピオンシップに輝きました。姉のビーナスは1991-93年のグラフ以来となるウィンブルドン3連覇を逃しました。
第1セットはビーナスのダブルフォルトで始まって、同じくダブルフォルトで終わりました。タイブレークに入るまでの試合展開でもセリーナが少し押していたんですが、タイブレークを一気にセレーナがモノにしてから、第2セットはほぼ一方的な内容だったような気がします。ファイナルが始まるまで事前の予想では3連覇をねらう姉のビーナス有利とのもっぱらのウワサで、特に、セリーナのフォアハンドが冴えなくて、セミファイナルの後では "It's always good to win when one of your strokes is on vacation." とまで、どこかで報じられていたんですが、決勝では第1セットのタイブレーク以降はセリーナが圧倒しました。こうなると、ビーナスは足のテーピングも痛々しく、第2セットではいいところがありませんでした。でも、私は見ていませんが、シングルスに続いて行われた女子ダブルスのファイナルでは、ウィリアムス姉妹が2連覇を達成してチャンピオンシップに輝きました。まあ、当然なんでしょう。シングルスのファイナルで対戦した姉妹がペアを組んでるんですから。
テニスやゴルフにコントラクト・ブリッジと、私はいかにも海外勤務でやりそうなスポーツやゲームは一通りやります。長崎でも少し前からテニスを再開したりしています。でも、かなり前から、テニスとゴルフについては男子のプロのプレーを見ても、私のようなシロートには何の参考にもならないと諦め、観戦する方は女子の方にシフトしています。たぶん、今夜の男子シングルスのファイナルを見ても、ロディックのサービスをフェデラーがリターンするところなど、ため息が出るだけのような気がします。しかしながら、昨夜の中継を見ていると女子のテニスもパワープレイになってしまって、これまた、女子のテニスも参考にならなくなりつつあると感じ始めています。

最後に、ウィンブルドンでは日本人選手はすべて姿を消したと考えられていますが、北京パラリンピック金メダルの国枝慎吾さんが車いすの部の男子ダブルスのファイナルに残っています。私は大いに応援しています。
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第141回芥川賞と直木賞の候補作品が決まる

2009/07/04 10:02
昨日の新聞に掲載されていたので、一昨日の7月2日の発表だと思うんですが、第141回芥川賞と直木賞の候補作品が決まりました。まず、文藝春秋社が開設している芥川賞のホームページ直木賞のホームページから候補作品一覧を引用すると以下の通りです。

氏名作品
芥川賞
磯崎憲一郎
(いそざきけんいちろう)
「終の住処」 (新潮6月号)
戌井昭人
(いぬいあきと)
「まずいスープ」 (新潮3月号)
シリン・ネザマフィ
(Shirin Nezam Mafi)
「白い紙」 (文學界6月号)
藤野可織
(ふじのかおり)
「いけにえ」 (すばる3月号)
松波太郎
(まつなみたろう)
「よもぎ学園高等学校蹴球部」 (文學界5月号)
本谷有希子
(もとやゆきこ)
「あの子の考えることは変」 (群像6月号)
直木賞
北村 薫
(きたむらかおる)
「鷺と雪 (さぎとゆき)」 (文藝春秋)
西川美和
(にしかわみわ)
「きのうの神さま」 (ポプラ社)
貫井徳郎
(ぬくいとくろう)
「乱反射」 (朝日新聞出版)
葉室 麟
(はむろりん)
「秋月記 (あきづきき)」 (角川書店)
万城目学
(まきめまなぶ)
「プリンセス・トヨトミ」 (文藝春秋)
道尾秀介
(みちおしゅうすけ)
「鬼の跫音 (おにのあしおと)」 (角川書店)

メディアで注目されているのは芥川賞候補のシリン・ネザマフィさんの「白い紙」ではないでしょうか。顔写真入りで報じていた新聞も見かけました。文學界新人賞を授賞された作品ですから期待できると思うんですが、どうも、作者がイラン人女性で漢字圏出身者ですらないという話題性が先行しているような気がしないでもありません。漢字圏ながら日本語を母語としない作家ということで、同じように注目を集めて第139回芥川賞を授賞された楊逸さんの『時が滲む朝』については、私もこのブログで昨年2008年9月1日付けで読書感想文をアップしましたが、「薄いスープ」と酷評した記憶があります。「白い紙」を収録している『文學界』は多くの図書館に置いてあるでしょうから、私も機会があれば読みたいと思いますが、期待と不安がゴッチャになっています。
実は、密かに私は磯崎憲一郎さんの「終の住処」に期待しています。このブログでも磯崎作品は昨年2008年2月1日付けのエントリーで『肝心の子供』を取り上げました。芥川賞の候補作にノミネートされるのは昨年の『眼と太陽』に続いて2回目ですし、どうでもいいことですが、今回のノミネート作者の中で40歳を超えているのは磯崎さんだけだったりします。決してラストチャンスとは思いませんが、控え目に言っても、そろそろ受賞しても不思議ではありません。「終の住処」は「彼も、妻も、結婚したときには三十歳を過ぎていた。」で書き出す小説で、この夫婦の何十年かに渡る結婚生活を夫の視点から振り返り、タイトルから想像される通りの内容らしいです。『文學界』だけでなく、『新潮』も多くの図書館に備えられていると思いますので、コチラも機会があれば読んでみたいと考えています。
最後に、いつも私が参照している大森望さんと豊崎由美さんの文学賞メッタ斬り!のサイトでは、めずらしく大森さんと豊崎さんの意見が一致して、芥川賞と直木賞の本命は、それぞれ、磯崎憲一郎さんの「終の住処」と北村薫さんの『鷺と雪』を推していました。両賞とも7月15日の選考会だそうですから、今から楽しみです。

文学賞とは何の関係もなく、文化の話題の範囲に入れて、来年度前半のNHK朝ドラ「ゲゲゲの女房」のヒロインは松下奈緒さんに決まったと報じられています。もちろん、メディアでもっとも詳しく報じているのは本家のNHKのホームページです。今朝も見ましたが、現在放映中の「つばさ」がややドタバタで私の手に負えなくなっているので、今年度後半の「ウェルかめ」とともに大いに期待しています。
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雇用統計から米国経済の先行きを考える

2009/07/03 20:14
昨夜、米国労働省から6月の米国雇用統計が発表されました。ヘッドラインとなる非農業部門雇用者数は季節調整済み系列の前月差で▲46.7万人減と、事前の市場コンセンサスの▲36.5万人減を上回った一方で、失業率はこれも季節調整済みで9.5%と事前予想の9.6%を下回りました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

米労働省が2日発表した6月の雇用統計(季節調整済み)によると、非農業部門の雇用者数は前月から46万7000人減った。減少規模は5月(32万2000人、改定値)を上回り、市場予測の平均(36万5000人)よりも悪かった。失業率(軍人を除く)は前月より0.1ポイント悪化し9.5%。米雇用情勢は底入れがまだ見えにくい状況だ。
雇用者数減は18カ月連続で1981年8月〜82年12月を抜き戦後最長。今年1月の74万1000人減をピークに減少ペースが鈍っていたが再び減少幅が拡大した。
製造業が13万6000人減と引き続き低調なうえ、底入れの兆しが見え始めていた建設(7万9000人減)、小売り(2万1000人減)も減少幅が再び拡大した。2007年12月からの景気後退局面での雇用減は合計で約650万人になった計算になる。

次に、いつものグラフは以下の通りです。いずれも季節調整済みの月次データで、上のパネルが非農業部門雇用者数の前月差、下のパネルは失業率です。影を付けた期間は景気後退期で、日本と違って米国では今もって景気後退が続いていると仮定しています。

米国雇用統計の推移

さらに、これまた、いつものフラッシュを New York TimesLos Angels Times から引用すると以下の通りです。




個別に統計を詳しく見ると、非農業部門雇用者数については、日経新聞にあるようにブルームバーグの集計によれば、事前の予想は▲36.5万人減といわれていて、私なんかは▲30万人近くまで、あるいは、▲20万人台まで悪化幅が縮小するんではないかと考えていたほどなんですが、結局、逆に、▲46.7万人減に悪化幅が拡大しました。ただし、米国の国勢調査の結果を受けた改定もあり、直近の4月が下方修正され5月が上方修正された結果、6月の悪化幅が大きく見えるという点は割り引いて考える必要がありそうに思います。同様に、失業率についても、就業者数が▲37.4万人減少した一方で、労働力人口も▲15.5万人減りましたから、このいわゆる discouraged worker の影響により、事前の予想ほどは失業率が上昇しなかったとも考えられます。ただし、全体として考えれば、メディアの論調のように、雇用環境の悪化が加速していると捉えるべきかどうかは疑問が残り、役人的な細かな表現振りかもしれませんが、せいぜい、雇用の悪化が続いていると言ったところではないかと思います。しかし、今回のこの統計を見て私も今後の米国雇用見通しについては大きく修正し、今年年末から来年年始くらいまで米国雇用者数の減少が続く可能性がある、と見方を変更しました。従って、米国の景気転換点も同じくらいの時期になる可能性が高いと受け止めるべきです。
我が国への影響を考えると、春先から輸出が増加を始めていますが、中国向けの失速とともに米国経済の回復の遅れから、夏場から秋口にかけて弱含みの展開となる可能性が残っていると考えるべきです。日本の景気に関する結論は従来と変わりありませんが、輸出はそれなりに我が国にとって重要な需要項目ですから、すでに景気後退を終えて拡大に転じているとしても本格的な回復にはもう少し時間がかかりそうな気がしないでもありません。

最後に話は大きく変わって、米国の雇用統計とも日本の景気と関係ないんですが、昨日、第141回芥川賞と直木賞の候補作品が発表されました。追って、この週末のエントリーで取り上げたいと思います。
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新しいペーパー「今次景気後退局面の特徴 - 猛烈なスピードによる調整後の景気展望とともに -」を書き

2009/07/02 20:01
今週になって、標記の新しいペーパー「今次景気後退局面の特徴 - 猛烈なスピードによる調整後の景気展望とともに -」を書き上げて提出しました。大学のホームページにもアップしてあります。本学紀要の9月号に研究ノートとして掲載予定です。出るのが9月末ですので、その時点で、はなはだ古い記述になっている可能性もありますが、一応、7月1日に利用可能な指標に基づいていると但し書きを付してあります。実は、紀要の9月号には1か月前にこのブログでも取り上げた「九州7県における人的資本の推計」も掲載されるんですが、人的資本の推計を基にした研究論文のペーパーと推計のないエッセイの研究ノートを区別しているつもりです。今回のペーパーについては、今までこのブログなどで書いてきたことを、それなりに、もっともらしく研究ノートして書き直したことばかりですので、新味はありません。なお、英文タイトルは "An Essay on Recent Japanese Recession" ということで、current ではなく recent ですから、景気後退は1-3月期に終わったとの基本的認識の下に書いています。

景気動向指数の推移

まず、今回の景気後退局面において、特に、2008年9月のリーマン・ブラザーズ証券の破綻以降、2008年10-12月期から2009年1-3月期の景気の落ち込みが激しかったのは、基本的に、生産や在庫の調整スピードが猛烈な速さであったことに起因すると私は考えています。上のグラフは今回とバブル崩壊後の景気後退期の景気動向指数をピークを100としてプロットしてあります。両方の景気後退期ともピークのほぼ80%レベルまで落ちましたが、その落ち方の傾きが今回はかなり急であったことが読み取れます。

各国輸入の推移

この猛烈なスピードによる生産と在庫調整のバックグラウンドには、日本の輸出先国における在庫調整も寄与しているんではないかと私は考えています。日本の輸出先における日本からの輸出品の在庫に関する統計は存在しないでしょうから、傍証でしかあり得ないんですが、上のグラフは、世界共通で景気のピークと考えられる2007年10-12月期を100として、日米欧のGDPベースの実質輸入をプロットしたものです。米欧では昨年10-12月期から今年1-3月期にかけて大きく輸入が減少しているのが読み取れます。それに対して、日本は1四半期遅れて今年1-3月期に大きく輸入が減っており、米欧では国内需要の減退に対して輸入をバッファーとして活用する経済構造になっていることが示唆されています。グラフはありませんが、機械受注統計の外需が大きく落ち込んでいることも傍証のひとつかもしれません。
前半で事実関係を確認してから後半に入り、シュンペータ的及びミッチェル的な景気の2分法について触れ、ミッチェル的な景気拡大の初期にシュンペータ的な不況にあれば経済活動の水準が低く、資本係数や労働係数が高い水準にとどまっているため要素需要は増加せず、一定のタイムラグがあることを指摘しています。最後に、今夜のブログでは繰り返しませんが、今後の景気動向は今年の年末から来年年始にかけて2番底を付けに行く W 字型のパスが想定されると締めくくっています。W 字型か L 字型かは潜在成長率と実際の成長率のそれぞれの水準に依存しますが、今回の景気後退を経て設備投資の減少などにより潜在成長率は1%程度の水準に低下したと私は考えている一方で、今年4-6月期から7-9月期はこの水準を上回るものと見込んでいます。というか、少なくとも、L 字型のパスの定義として、この1%の潜在成長率を下回る成長率が続くと考えるのは非現実的だと受け止めています。

W 字型の景気パスをたどって2番底を付けに行くと私が想定している最大の理由は最終需要の動向にあります。今夜は明日の独立記念日の休日のため、米国の雇用統計がいつもの第1金曜日から前倒しで発表されます。輸出の先行きを占う上で米国景気の占める比率は依然として高く、明晩のエントリーで詳しく取り上げたいと思いますが、今から気がかりです。
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日銀短観から何を読み取るべきか?

2009/07/01 22:57
本日、日銀から6月調査の短観が発表されました。ヘッドラインとして注目されている大企業製造業の業況判断DIは3月調査の▲58から▲48に上昇するとともに、先行きについても▲30とさらに改善する見通しとなっています。まず、いつもの日経新聞のサイトから統計のヘッドラインに関する記事を引用すると以下の通りです。

日銀が1日発表した6月の企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は大企業製造業でマイナス48と、過去最悪だった3月の前回調査(マイナス58)から10ポイント上向いた。改善は2006年12月以来、2年半ぶり。3カ月先の見通しでも改善を見込んでおり、輸出などの持ち直しを背景に急速な悪化には歯止めがかかった。ただ設備や雇用の過剰感は払拭(ふっしょく)されておらず、09年度の設備投資計画は前年度比2割強の減少に下方修正された。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いた値。大企業製造業のDIは最悪期は脱したものの、水準的には日本の金融システム不安が強まった1999年3月(マイナス47)と同程度にとどまる。
業種別でみると、製造業の15業種のうち鉄鋼と木材・木製品を除く13業種で、DIが前回から改善した。輸出環境の持ち直しと在庫調整が進んだ結果、自動車はマイナス79に13ポイント、電気機械はマイナス52に17ポイント、それぞれ改善した。

次に、いつもの日銀短観業況判断DIのグラフは以下の通りです。上のパネルは製造業、下は非製造業です。それぞれ、規模別に3本の折れ線グラフでプロットしてあります。影を付けた部分は景気後退期なんですが、このところのグラフの例の通り、暫定的に今年1-3月期を景気の谷としています。

日銀短観業況判断DIの推移

ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIについては、私は少なくとも▲40周辺まで、場合によっては▲30台まで大きく回復すると考えていたんですが、回復幅は小さなものにとどまりました。市場の事前コンセンサスも下回りました。ただし、その分という言い方はおかしいかもしれませんが、3か月先の先行き見通しは大きく改善しています。年央の2四半期をならしてみれば、こんなもんということかもしれません。足下の4-6月期GDP成長率は大きくジャンプする一方で、景況感の改善とは少し乖離がある可能性も残されています。何といっても日本では大企業製造業が景気回復をけん引しますから、中堅・中小の製造業と大企業非製造業に景気拡大の余波が及びつつある一方で、中小企業非製造業はまだまだ景気回復から遠い位置にあることが実感されます。

日銀短観設備・雇用判断DIの推移

次に、上のグラフは見ての通りの設備と雇用の判断DIなんですが、業況の回復を受けて、生産要素たる設備と雇用に対する過剰感も反転しつつあります。でも、まだまだ過剰感は根強く、設備投資の回復や雇用の本格的な増加に至るまでしばらくの間ラグがありそうです。しかし、バブル崩壊後の景気後退期から今世紀にかけて観察される通り、設備や雇用に対する過剰感は一気に高まる一方で、景気拡大初期の過剰感の低下はゆっくりとした動きとなるのが特徴だったんですが、上のグラフを見る限り、今回だけは過剰感の低下がかなりのスピードで進む可能性が示唆されていると私は受け止めています。

日銀短観設備投資計画の推移

とうことで、本年度の設備投資計画も下方修正されています。通常、各企業は3月時点で抑えめの設備投資計画を作成した後、6月には上方修正することが多く、日銀短観の統計としてのクセが出るんですが、今年のように6月調査時点で下方修正されるのは極めて異例のことだといえます。鉱工業生産指数の資本財出荷や機械受注統計などを併せて見ても、年内から年度内いっぱいくらいは設備投資が盛り上がりそうな気配すらありません。なお、上のグラフは大企業の全産業ベースの設備投資年度計画です。土地を含みソフトウェアを含んでいませんから、GDPベースの設備投資とは少し概念が異なるので単純な比較は出来ませんが、設備投資は年度を通して軽く2桁マイナスを覚悟する必要があるかもしれません。特に、同じ要素需要といいながら雇用とやや違う点として、設備投資のバックには企業収益があるんですが、今回の短観では企業収益見通しも悪化しています。

ハッキリ言って、今日の短観はやや物足りない印象を受けます。4-6月期GDP成長率が大幅プラスに回帰する実体経済に対して、企業マインドとの間に少し乖離が見られるような気がします。ウェイトを持って合計される付加価値生産額とウェイトなしに単純に合計される企業マインドの差かもしれません。
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労働統計に見る経済活動の水準

2009/06/30 21:13
本日、総務省統計局から5月の失業率などの労働力調査が、また、厚生労働省から同じく5月の有効求人倍率などの職業安定業務統計が、それぞれ発表されました。ヘッドラインの季節調整済みの月次系列で、失業率が5.2%、有効求人倍率が0.44倍と、それぞれ前月に比べて悪化しました。まず、いつもの日経新聞のサイトから統計のヘッドラインに関する記事を引用すると以下の通りです。

総務省が30日に発表した5月の完全失業率(季節調整値)は5.2%と前月から0.2ポイント悪化した。厚生労働省が同日発表した5月の有効求人倍率(同)も0.44倍と前月から0.02ポイント下がり、過去最悪を更新した。生産に持ち直しの兆しがみられる一方、雇用情勢は依然厳しい状況が続いている。厚労省は雇用判断を「さらに厳しさを増している」と5カ月ぶりに下方修正した。
失業率は15歳以上の働く意欲がある人のうち、職に就いていない人の割合。5.2%は2003年9月以来、5年8カ月ぶりの水準になる。完全失業者数は前年同月比77万人増の347万人で、増加幅は過去最大。就業者数は136万人減の6342万人だった。総務省は「生産は上向いているが、水準は低く、雇用の増加に結び付いていない」と分析する。

次に、いつもの労働統計のグラフは以下の通りです。いずれも月次の季節調整済み系列で、上のパネルは失業率、真ん中は有効求人倍率、下は新規求人数です。影を付けた部分は景気後退期なんですが、このところのグラフの例の通り、暫定的に今年3月を景気の谷としています。

労働統計の推移

まず、上のグラフを見て直感的に理解されるように、労働環境は総じて悪化を続けています。年初1月の失業率は4.1%だったんですが、アッと言う間に5%を超えました。就業者数が大きく減少している中で、労働市場から退出する部分も大きく、非労働力人口も増加しています。有効求人倍率は過去最低を記録しました。最近の動きでは求人が減る一方で、求職者は増加しており、厳しい就職情勢が浮き彫りになっています。新規求人数も増加の兆しすら見えません。昨日発表された鉱工業生産指数に見られる通り、生産が増勢を示していることは確かですが、昨夜のエントリーの繰返しで、資本係数や労働係数がまだ依然として高く、新規の雇用は増えていません。なお、新規求人数は別ですが、失業率や有効求人倍率については、現状では労働力人口が減る段階にあり、今しばらく景気回復が続いたとしても、今度は、非労働力化していた人が労働市場に再参入することにより労働力人口が増えますから、今しばらく悪化を続けることが予想されます。
他方、グラフや新聞記事の引用は取り上げませんでしたが、家計調査の消費は着実に増加しています。新型インフルエンザで外出が控えられたものの、昨年よりもゴールデンウィークのカレンダーがよかった効果に加え、定額給付金給付の支給開始やエコポイント導入期待もあって、お買い物は進んだようです。でも逆に、雇用情勢が厳しいままでの消費の盛り上がりが続くとサステイナビリティに欠けるとの見方もあり得ます。消費の活性化から労働環境の改善に結びつくのか、それとも、雇用の改善が遅れることが消費の足を引っ張るのか、少なくとも年内いっぱいくらい、私は後者の効果の方が強いと考えています。

何度も書きましたが、今週前半は強弱マチマチの統計が出ます。明日の日銀短観の業況判断DIはかなり上がるんでしょうが、設備投資計画も注目です。
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